2011年2月19日土曜日

東京新聞の「自炊」記事

今朝の東京新聞の特報面に「自炊」に関する記事が出ていました。
「自炊」が一般化してきて嬉しい反面、著作権な観点から、自炊の代行サービスンなどのグレーゾーンがあることも事実で、みんなでこれから考えていかなければならない問題だと思います。
 

--引用ここから--------
東京新聞 2011年2月19日 こちら特報部

「自炊本」は違法?
書籍データ化ビジネス盛況

 iPadやスマートフォンなどでデータ化した書籍を読む人が増えている。そこで注目されているのが、書籍のページをばらばらにしてスキャナーで読み込む「自炊」と呼ばれる作業。自炊代行サービスというビジネスも乱立しているという。だけど、これって著作権違法にならないの? (小国智宏)

東京・秋葉原の一角。ビルの二階に「自炊の森」はある。ここのシステムは、客が持ち込んだコミックなどを店員が裁断。客はそれを店内のスキャナーで読み取りデータ化する。
原田栄次郎店長は「客自身が複製するので、著作権法違反には当たらない」と説明。料金は書籍の重さ一キロ未満が千円。一キロ以上は百グラムごとに百円が加算される。千円でコミックなら六~七冊、単行本なら二~三冊をスキャンできる。
持ち込だけでなく、店の本棚に店側は「展示した本を客が勝手にスキャンしているだけ」と違法性を否定する。
ネットで注文を受け付ける自炊代行サービスも増えている。
客は書籍を宅配便で自炊代行業者に送る。業者は送られた書籍を裁断、スキャンして、データ化したものを客に送信する。ある大手業者は「個人所有の書籍を業者に複製させたことが、違法と認定された例はない」と強調。「再流通させないため、裁断書籍は必ず破棄している」とする。
著作権法では個人使用を目的とする私的複製は認められている。「自炊」も自分がスキャンし自分で読むだけならOKだ。
著作権法に詳しい福井武策弁護士は「自炊の森」について、「実態としては書籍を購入していないのに店にある書籍を自由に複製できることになり、違法性が疑われる」と話す。「自炊代行」についても「使用者と複製者が異なる代行サービスは私的複製にはあたらず、違法の疑いが強い」と指摘する。いずれも違法性の濃い「グレーゾーン」だ。日本書籍出版協会は「代行業者は、客が著作権者の許可を得ていると説明するが、信用できない」と反発を強めている。
実は「自炊の森」の原田店長は「思ったほど利益はない」と嘆く。自炊代行は、数万円のスキャンする機器さえあれば始められる。大手から個人まで業者が乱立。中には一冊数十円という格安業者もいて競争が激しい。
「自炊」は拡大。家電量販店では、「自炊」機器のコーナーを設けたところも。大手のレンタルソフト「TSUTAYA」は一部の店舗にスキャン機器を置き、実験的に有料で利用できるサービスを始めた。
ただ、データはいくらでも複製が可能。大量に流通してしまう可能性もある。そうすれば、著作権者の被害は莫大だ。福井弁護士は「客が一回だけ自炊代行を頼む程度なら大きな問題にならないが、代行業者が増えてくれば、裁断本の横流しなどの悪質業者が必ず出てくる」と警告する。
「自炊代行は利便性が高く需要が多いことも事実。防ぐことはできない。複写権団体などを通じて、業者の利益を作家や出版社に還元する仕組みをつくることも考えるべきだ」

[自炊の流れ]
1.まず本を裁断して、ページをバラバラにする
2.バラバラになった本をスキャンし、データを端末に取り込む=いずれも18日、東京都千代田区の「自炊の森」で

--引用ここまで--------


数年前の音楽CDからのコピーに関する問題では、「自炊」のスキャナーに該当する”データを吸い上げる機器”というのが、ほとんどの家庭にあるCDコンポやPCだったため、広くデジタルコピーが広がりました。その結果、ネットでのファイル共有やコピーコントロールCD騒動などを経て、ダウンロード販売が主流になりCD販売は減少してしまいました。
本のコピーに関しては、まだ「自炊」という行為が普及しているわけではないので社会問題として表面化はしていません。自分で「自炊」する行為は全く問題ないですが、スキャンサービスを利用する際は、充分注意する必要がありそうです。